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1.3g理論

 家庭科の時間、このようなグラフを見せられたことがないだろうか?



 引用元:株式会社東芝・洗濯機Q&A「洗剤濃度と洗浄力の関係」

 濃度0.13%つまり、水 1リットルにつき1.3gを越える洗剤を投入しても、ほとんど洗浄効果は上がらないという図表である。どこで聞いたのかは覚えていないが、1.3g/l以上の洗剤を入れないのがアメリカ人だとすれば、少しでもきれいになるようにとさらに洗剤を追加するのが日本人の気性だという。
 確かに、洗剤を2g、3gと追加していけば微妙ながらも洗浄効果は上昇する。だが、微生物の分解力を超える余剰な洗剤成分が残り、より水質汚濁をすすめてしまうだろう。環境破壊だけでなく、洗剤そのものも早く減るから経済効率も悪くなる。この1.3gラインは、まさに『過ぎたるは及ばざるが如し』の意図をよく説明できる。1.3g/l前後で済ませるなら効率主義者、さらに追加をして真っ白さを目ざすなら”過ぎたる”完璧主義者といえる。
 真面目な、勤勉な人ほど完璧を目指して2g3g分の努力をするから疲労をためてしまい、緊急対応や新しい発見をする余力がそがれて、さまざまなものを失っている状況に危なさを感ずることが多い。それで私は、彼らの無理な行動や過剰な対応を押さえる際、上記の『1.3g理論』を持ち出している。
 「1.5gぐらいにしといたら良えねん…」

 野中広務氏は私が尊敬する政治家の一人だが、いまだ疑問に残るのが、まさしく『過ぎたる仕事師』という側面である。
 動きの悪い村山内閣の下で自治大臣として震災救援の指揮を執りサリン冤罪の後始末をし、自民党幹事長時代は加藤の乱鎮圧や独自ルートで批判を続ける中国を説得するなど、さまざまな業績(とはいえないかもしれないものもあるが)を残している。いずれも水面下の圧力や寝技・裏技の類を使わねばならない『汚れ役』としての働きであり、氏は誰もがやりたがらないことをかぶり続けることで、当選わずか6回目にして自民党No.2の座に、そして影の首相の立場に上り詰めることができた。

 目立つ活躍と急な出世には、妬みや(外国発を含む)妨害がつきものだ。
 議場での表立った批判ももちろんあるが、なかには謀略とか情報工作といった手段で妬まれる対象を襲うことがある。最近のでは山崎拓が代表的だが、要はあらかじめつかんでおいた本人の落ち度を、追い落としたい時期に世間にばらすことで対象の評判をおとしめるのが常套手段だ。暴き立てる内容の多くは異性関係、次に金銭関係が挙げられる。(可能性がある事例:クリントンとモニカ・ルインスキー、ブッシュJrのアル中歴疑惑、辻元清美元議員の秘書給金横取り)。
 落ち度のない人間なら、例えばいかにも手をつけたくなりそうな美人を事前に送り込んで、多少でも色事が起きるのを待つ。出てきた時点で送り込んだ女性が訴え出れば良い。(可能性がある事例: 橋本元首相と中国人秘書、横山ノック元知事と選挙スタッフ)

 だが、野中氏はそのような疑惑を大体的に報じられたことが一度もない。
 おそらくは、己の政治効果を完璧にするがために、政敵や妨害を仕掛ける可能性がある相手の弱みを徹底的に握り、いざとなれば出せる状態にすることで相手の出方を止めたのだろう。
 その証拠に京都で会食をすれば、かならず氏の耳にはいるという現象があげられる。前の前の総選挙の頃、京都選出の野党議員が大臣経験もある同党のベテラン議員と祇園で打ち合わせをしたところ、野中氏が時間と店の場所まで正確に言ってみせて、ベテラン議員を驚かせたという。それだけではない。出てきた弱みを打ち消す作業もやる。自らが理事長をつとめたこともある、地元・園部町の社会福祉法人で不明金が出た際、縁戚にあたる女性職員の横領罪として処理した疑惑などがある。
 こういう策略防護とかいう作業は、政治家だけでなく一般庶民の誰しもが生きる手段として使うが、野中氏のそれはあまりにも完璧、いや過剰であり、彼に近い人物までもが被害をうけるほどである。なによりも暗い影が常につきまとい、見えないところで周囲の恨みがたまっていく…

 あげた情報のすべてが本当だとは思わないが、氏の娘さんには『早く辞めて』といわれ、ご本人も『早く辞めたい』と言い続けていたのを考えると、政治家として動くがための犠牲があまりにも大きいことを自覚されていたらしい。今回のご引退も、耐えかねた結果ではないかと思われる。
 私のような若輩ではわからない多くの難題を解決したが、犠牲も大きかったことは否めない。まさに野中氏の真面目すぎる性格が、1.3gラインを越え2g いや10gも「弱みを消す=政治効果を高める」洗剤を使う気持ちにさせたのであり、積み重ねた結果、氏をとんでもない怪物的存在にならしめたのだ。

 それでも、野中広務氏には感謝と尊敬の念を重ねるが、同時に『やっと休まはったか、良かったな』と思うのが本音だ。対策が過ぎたのである。
 余った洗剤成分で水を濁らせてしまったのだから。

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