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好きな事でメシが食えるか?

 「サッカーでメシが食えるか?」という本の紹介をやれと言われているので、久々にブログを書くつもりだが、最近、どうもストレスがたまり気味だ。
 好きな部下(後輩まかせで仕事しない)を露骨に取り立てる役員とか、成果主義目標管理制度が怖くて無理難題を押し付ける上司(多少は同情できるが)とか。宮仕えというのは、上下関係の理不尽と戦う毎日でもある。理不尽から逃れられるのは自営業だが、成功するか否かは全て自分の責任である。これはこれで大変だ。

 では、己の好きなことを仕事にすればよい。
 上下関係の苦労も、経営責任の重圧も気にならずに済む(はずだ)。

 たまたま、周りにそういう男が居た。
 学生のころから「もつ」と呼ばれる編集者である。
 かなりの昔から、彼はこう言いつづけていた。

 「ロクさん(=筆者)、俺はサッカーの本を出したいんですよ」

 いちおう、文学部の出版コース?に籍をおいていたが、そのような気配は一向もなかった。昼は下宿友だちと遊んだりサッカーを楽しんだり、夜は木屋町の店でバーテンをやっていた。
 ただ、強引に人を引っ張るパワーがある反面、流れに任せて身を置ける柔軟さをあわせ持つという、彼のマルチ加減はこの頃から目立っていた。

 あれから7年、編集プロダクションに3年間身を置いた“もつ”にチャンスがめぐってきた。ある専門雑誌から声がかかり、また別の出版社からはサッカー関連の本を責任編集せよとの依頼が来た。
 彼は悩んだ挙句、まず責任編集の道を選ぶ。

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 「明日、サッカーの試合を観にいくんですが、いかがですか?」

 もつめ、曲がりなりにもサラリーマンの俺に、前日誘うとは何ごとか。と思うも、「女の子に4人も断られた」とのことでOK。次の日は早々に退社して調布に向った。
 
 前半途中で入場して、ハーフタイム。“もつ”は早速カバンの中から本を取り出してみせた。

 「できましたよ!『サッカーでメシが食えるか?』。」
   
 半信半疑で覗いてみると、これが面白い。サッカー関連の仕事は何でも取り上げられているという、一種の就職読本である。
 選手・監督、解説者、協会職員、カメラマン、スポーツアナウンサー、グラウンドキーパー、サッカーバー経営者、プロチーム所在都市の公務員(もつの地元・市原市)などなど。それぞれにインタビューをして経験談をまとめ、それぞれの職業の「サッカーで飯が食える度」欄を左頁上にまとめるなど、見やすさも重視している。

 だいたい、サッカーならプロ選手にならねば、なんて誰が決めた事なのか?スタジアムのバイトからショップの兄ちゃんまで、サッカー関係者であることには変わりない。
 俺のストレスのもう一つの原因もここだった。勤め先の部門査定が、営業や親会社がらみとか労組関係者など目立つ方々にはあまく、センター運用とかお客様センターなど目立たない職務には辛い。全てのパーツがそろって一つの事業という発想が、多くの業界で欠けている。
 “もつ“が、サッカーがらみの様々な職種に目線を広げたのは、「王道は一つ」と決め付けがちな現代社会へのアンチテーゼではなかろうか。

 試合はユベントスが格の違いを見せてFC東京に快勝した。MVPのデルピエロは、対横浜戦に続いて2台目の日産車を獲得した。
 
 デルピエロ君、君も好きな事でメシを食っているのか・・・
 いや、もう一人そばにいた。

 「で、ロクさん。一緒に本のビラ配ってくれませんか?500枚。」
 「あほか、金よこせ」
 「いい本だって言ってくれたでしょうが、サッカーファンが相手なら捌けますよ。」

 と言いつつ、またのってしまった俺。
 腹をくくれば出す声の勢いもあがり、40分間ですべてを撒く。
 意外なまでに高反響だ。

 「まじで金よこせ、興味がない女の子連れてきたらこうは行かへんかったぞ」
 「だったら、○○(人物ではない)を紹介したこととか、チャラにしますよ」
 (おれの弱みをつきよってからに・・・)

 「じゃあわかった、サッカーが好きなんは知っている、ほんなら編集も大好きなんか?」
 「毎日が学園祭前夜のような世界ですからね。楽しいですよ(笑)」

 そう言った“もつ“は、スタイリストと待ち合わているといい、編集プロの事務所に急いだ。

 父の言葉をふと思い出した。
 「大介、天職に就くヤツはそないに居やへんぞ」

 お父さん、それ嘘かもしれんわ。
 すでに“もつ”が、天職に就いている。その方法は『サッカーでメシが食えるか?』を読むのが近道だろう。

 というわけで、もつ君。金くれ(笑)

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