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岡田阪神、反目標管理・成果主義の勝利! 万歳!

 俺は嬉しくてしようがない。
 岡田さんが選手に目的と責任を持たせる運用をしたうえで、このリーグ優勝が転がり込んできたからだ。

 星野さんのころは、「おい、カネ。明日は使わんかもしれへんぞ」と不調の金本選手を脅したり、激励以外の「マイナスを恐れさせプラスを強要する」手段を使いながら采配をしていた。これはこれでよく、弱いチームの体質改善に極めて有効である。だが、やがて選手たちの精神は疲れてしまい、勝ち続けるチームの編成には害になる。
 岡田監督の就任は、生え抜きへのこだわりや星野さんの健康事情だけでなく、星野さんの選手消費型運用よりも岡田さんの育成・持続の手腕に期待した面が強かっただろう。

 最近アメリカかぶれの経営者が大好きなのが、「成果主義」とか「目標管理」といった発想である。
 まず、結果目標を先に立てなるべく数値化しておいて、その達成を部下の義務とする。達成すれば増俸・昇進、しなければ減俸・降格といったわかりやすい仕組みだ。
 が、ここには各人の能力が発揮される度合いと範囲や、社会情勢による目標達成の困難度という考え方は一切含まれない。もっといえば、裏づけのない根性論で目標数値を設定しても、「成果主義」「目標管理」の類ではある。
 同じ事をやって失敗した国があったろうに。計画経済を推し進めたソビエト連邦がそうだ。
 社会や自然の動き、そして地域や人々の特性を無視して、「5ヵ年計画」とか年度で区切った数値目標を追わせた結果、制度も人も疲労して国家まるごと落ち込んでしまった。日本企業で落ち込んだところも同じような特徴が見られる。2年程前の富士通や、今のソニーとか・・・

 人工的な『目標』ではなく、社会や自然、そしてその集団の特性に見合った『目的』に一致しようと目指すことが本来の姿ではないのか?

 話を阪神タイガースに戻すと、岡田監督の考え方はシンプルであった。
 タイガースの目的は優勝して、その阪神地域を中心とした関西の景気をよくすることだ。そうしているうちにお金は稼げるし、なにより売り手(タイガース)よし、買い手(ファン)よし、世間(関西地域など)よしといった、三方よしの精神を達成して、世の中にお金を循環させられる。
 村上ファンドのような、株価の上昇を狙った投資で売却益を狙い、単純に敗者(高い株を買わされて値下がり株を持たされた連中)の存在によって、金を吸い上げる連中に、電鉄本社株を握られたのは、あまりに不幸な話だ。(といっても、経営に口出ししたり妙な相手に株を売るなどすれば、阪神ファンに命を狙われる可能性がある。その恐さは、関西人の村上氏自身が良く知ってるやろう。買うたんは、ほかの目的か?)


 また、話が脱線した。
 岡田監督の目的は、チームが優勝することである。単純だ。選手個々人の打率や防御率などの「数値」は関係ない。ひとつでも多く勝って優勝することだ。 

 並みの監督なら、高い打率や高打点、好守の野手、あるいは防御率の高い投手など人材を集めたらそれで勝てると思うだろう。あえて、人材集めを中心にやった手法が監督時代の星野さんである。

 が、岡田さんの場合は、ほぼ現有勢力と二軍監督時代を通じて自ら育てた若手選手で戦う手法をとった。個々の特性同士をうまく合わせて、全体としてチームが勝ちやすい状態を作ればいいわけだ。
 選手それぞれが出すべき能力の範囲と目的を考えながら力を合わせれば、たとえ選手が何人か欠けようとも、チーム全体の力が落ちる可能性は少ないうえに疲労も減る。そして、出すべき能力の範囲と目的は選手個人がしっかり自覚して責任を持てば、誇りにもなる。

 25歳で高卒から7年目になる藤川球児投手に、7、8回のリードを守るいわゆる中継ぎ、セットアップを任せたのは、目的意識と責任の自覚をうまく促した好例だろう。

 妻と二人の子を抱えながら体を壊し、上昇傾向にあったチームのなかでそれといった大きな働きをしていない。もう野球でメシを食えないと追い詰められた彼は、投球術を変え、安定して150km/h前後のボールを投げられる力をつけ、コントロールを向上させた。

 これまでの常識なら、チームでもっとも能力の高い投手は先発に回す。
 岡田タイガースの方針は、少しでも奪ったリードを守りとおす、徹底した先行逃げ切り野球を考えていた。20年前の吉田監督当時も、先発が良いのも野手が打てるのも「たまたま」だと割り切って、リードした試合は、もっとも良い球を投げられる投手(中西清起現投手コーチ、山本和行氏など)に救援させたことで、多くの勝ちを拾った。
 野球は相手でも1点でも多くとれば勝ちである。ホームランで博打的に大量点が奪える可能性のある打線を組むよりは、常に先に点を取りやすい状況を作り、うまくいけば、一番いい投手を出して逃げきったほうが、勝つ確率は高いのだ。10-0を目指すのではなく、常に4-3や6-5でも勝てる野球。
 第一、勝った率の高いほうが優勝で、得失点差は問われないのだから。

 それで、速度と制球力のある藤川に7-8回の勝ち逃げ担当・セットアップを任せ、目的意識と責任感・そして誇りを与えた。あと二人のJFK、ジェフ・ウィリアムズ(J)・久保田智之(K)両投手も同じように、目的意識と責任感を持たされた。

 先発投手についても、下柳剛投手に大きな効果が出ているようだ。37歳にして14勝3敗。現在・最多勝タイの位置にいる。だが、投球回(イニング)数は122回1/3と今季の規定回数達成はほぼ不可能で、そのうえ1試合あたりの登板イニング数は5.3。勝ち投手の権利を得る5回をわずかに越える程度だ。
 おそらくは、「シモ、おまえに9回完投は望まんし、させへん。せやけど、最低5回、長くて7回まではリードを守れ。これがおまえの責任範囲や、あとはJFKとかがリードを守りよる。」とでも言いふくめたのだろう。本人の能力で達し得る目標(ここはこの言葉を使おう)を示し、それ以外は指揮官である俺(やほかの選手)の責任だと。
 以上のような考えでいけば、下柳の目的は達成可能な範囲で明確化する。つまり6回での降板を計算して体力を配分できる。そうやって「勝てたらいいな」と、時にはのらりくろりと敵の攻撃をかわした。なによりチームメイトの動きを常に感謝する姿勢を忘れない。

 己が出せる力の範囲や持ち場に応じた万全を尽くし、周囲の支援を待つ。そして、心より感謝する。美しい形だ。
 

 先に点を取る役目を請け負う野手陣の中では、1番バッターにいるレイザーラモンHGこと赤星憲弘外野手の存在が目立つ。10/1現在・今季717得点中、1回に111点が集中したのは、赤星の働きによるところが大きい。先行逃げ切り野球の神様のような存在だ。
 赤星の目的は「過程は何でもええから、1回でも多くホームベースを踏んで得点すること」である。
 そのためには、内野安打、エラー、バンド安打なんでもいいから1塁に進み、足を使って盗塁を決め、ホームベースに近づいて、後のバッターの後押し(ヒットその他)を待つ。
 ただし、彼の盗塁数とか安打数といった数値は必ずしも勝ちに直結しない。その後の塁間でアウトになってしまえば得点にはならないからだ。極論だが、得点数が切り込み隊長・赤星における本当のステータスだ。

 岡田監督の赤星に対する発想を象徴する、こんなエピソードがある。

 6月29日の対広島戦。1回表にトップバッターとして2塁打を放った赤星は、試合開始早々に1本のシングルヒット・1塁打でホームに帰れる状況を築き上げた。いきなり得点チャンスを作るという最高の働きである。
 だが、この後に個人の目標を目指す欲が出る。
 続く2番・鳥谷への初球で、いきなり三塁への盗塁(三盗)を狙う。すぐさま、キャッチャー・石原は三塁手・新井にボールを投げ、結果はアウト。二塁打の功績はさっさと消えてしまい、なにより、チーム全体の気分が沈む。「勝手に出て、勝手に死によったわ・・・」いわゆる、試合の流れが悪くなるという状況だ。
 確かに、無死三塁にできれば、鳥谷の犠牲フライのみで1点が入る楽な状況にはなる。しかし、三盗は二盗よりも成功確率が低い。当然だが、キャッチャーからは二塁より三塁が近いのだ。なにより、赤星の足で二塁に居れば、鳥谷がヒットを外野に飛ばせばホームに生還して得点できるうえに、外野フライや内野ゴロでも、塁をひとつ進めて1死三塁で3番シーツ、4番金本の打撃を待てる。三盗を試みる必然性は低い。

 この赤星の暴走に対して、岡田監督は当然のように激怒した。
 「ギャンブルするところと違う!」

 赤星の盗塁(成功)数が多いほうが勝ちは多くなる。だが、盗塁企画数と勝ち数は比例しない。失敗すれば得点可能ランナーを減らしてアウトを増やす、確実に負けに近づくのだ。盗塁を控えてチームの同僚たちに頼る選択は極めて堅実といえる。自分の能力と課せられた責任の範囲を冷静に受け止めてから、三盗を狙うべきだった。
 
参考記事:
 岡田監督、前半の拙攻に「ぶさいくなゲーム」…スポーツニッポン・6/30版
 サンケイスポーツ・6/30版

 個人の目標達成より本来の目的を優先する、岡田監督ならではの叱咤だろう。

(もちろん、優勝という大目的が達成されれば、個人の数値目標達成についても配慮をみせる。今夜、6回途中で5失点した安藤投手にその回を投げきらせたのは、投げきれば年間の規定投球回数・146回にちょうど達し、かつ11勝5敗で勝率.688となる安藤は最高勝率投手の栄誉が手に入るからだ)


 強いチームの選手がよく言う言葉として、
 「自分が活躍しても、チームが勝たねば意味がない」というのをお聞きになった方は多いだろう。まさしくその通りで、個人の目標を優先してチームの勝ちを損なうのであれば、何ら意味がない。
 個々の特性を生かして力を合わせればよい。攻め役は攻め役、守り役は守り役だ。
 特性を無視して全ての社員に個々の数値目標を設定して攻めに走らせる、「成果主義」のなんと愚かなことか・・・味方同士での足の引っ張り合いを暗に奨励してどうする?「成果主義」を掲げる企業団体の全てがそうなっているわけではないだろうが。

 まず、身の丈に応じた目的一致を。岡田さんはそんな単純なことを当たり前にやれる賢さをお持ちだ。ホークスの王監督やロッテのバレンタイン監督、中日の落合監督など、ほかの強いチームの指揮官も、この単純な発想を粛々と実行する点で共通する。

 わが親会社の○○会長も、ぜひ岡田監督の○○のカスでも煎じて飲んでもらいたいものだ。もう効き目もないだろうけど・・・

 ふう・・・現実に戻ってしもうた。
 次は日本シリーズ制覇や(笑)

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コメント

ろくさんすげーよ。

スポーツライターになれますね。

投稿: akimoto | 2005/10/04 20:34

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