これからはデフレが普通。生活を変えられる者の勝ち。
私は経済学が専攻ではなく、数式を出されても「ハァ?」となってしまう。
とはいえ、自称高校1年生レベルの数学力と、自称オタクレベルの雑学と歴史知識でマクロの動きぐらいは、素人評論家並みには掴めるつもりではいる。
さっさと、参考リンク先を挙げておく。
世界同時「真性デフレ」の恐怖…日経ビジネスオンライン
生産性格差デフレ*…池田信夫blog
書評:水野和夫著『100年デフレ~21世紀はバブル多発型物価下落の時代』(日経ビジネス人文庫)…ぐんぐんぐんま~とうとう東京
下につれるほど未来を語っている。
デフレに慣れない勢力の代弁、最近のデフレが何であるかの分析、デフレの時代を肯定。といった順番になるだろう。
このあたりを後学のために私になりに総括してみる。高校公民科の副教材の付け足しぐらいにはなるかもしれない・・・ならんかな。なお、私は素人だから、いっさい数式は使わない(笑)
デフレの逆・インフレーションは、物価が上がるにつれて個人法人に限らず収入が上がっていき、貨幣の流通量も上がって行くことを言うわけだが、この状態は、『高くても、必要なモノだから買おう』の意識が、山村にこもりっきりの婆様からパチンコ店の行列に並ぶオヤジ殿にまで浸透していなければ成立しない。
この300年間ほどで経済成長とか好景気といわれていたのは、一般庶民の感覚で追いつけるレベルの『軽いインフレ』を指していた。目に見える拡大感もある上に、利子負担以上にインフレが進めば借金も返しやすくなるから、新規事業も起こりやすい。
借金側に回ろうが投資側に回ろうが既得権者たちは軽いインフレが嬉しいわけで、すでに儲け続けてきた仕組みを生かそうとすれば、苦もなく豊かさが味わえる。
が、最近は、何でも先進国のわが国が、デフレ上等!状態に陥っている。
日銀が金融緩和しないから、つまり貨幣を増やさないから収入も物価も上がらないという論理がはやっているが、素人の私からすれば、金融緩和をしようとも一般庶民の生活向上感には思ったよりも影響がないと思う。
結局元に戻って、デフレは続くのだ。
- 『必要なモノはあるから、安くなければ買わない』意識へ
- 設備投資をすればするほど?
- 国内需要が無理なら、金を貸して購買力をつけた国にモノを売って儲ければいい?
- アメリカではなく新興国相手に金を貸して儲ければいいのだが…
- 4.を実現したとしても、新興国が力をつけた後は…
- 先にデフレ慣れしたほうが勝ち?
日銀から資金を借りた一般銀行が、各事業者(個人法人を問わない)への貸付を増やしたとしても、以前ほどには売り上げがあがらないだろう。すでに財布の紐は固い。日本の一般庶民は一通りの経済危機や技術革新を体験済みであり、よほど生活が便利になるモノでない限り、高い買い物をしなくなっている。
メールさえ出来ればいい人はPCの買い替えは要らない。壊れにくいトヨタの新車買えば10年は持つ。衣類だってファースト・ファッションをうまく使えば済むし、住宅だって都会なら借家でよい。さらにひとりっ子が増えているため、親の持ち家を相続できる確率が高くなっており、「帰るべき土地」を確保する需要も減っている。
高くても買いたくなるには、産業革命でいう「動力機関」の出現のように、小学校1年生レベルの数学力でもわかる目に見える進化が必要だ。補給の要らない燃料電池が普及するとか、どんな水でも飲み水に変えられる浄水器が発売されるとか、面積1坪で家族一年分の収穫を得られる水田とか、色々あるはずだ。
目に見える進化があれば、子どもを増やしても大丈夫などとわかりやすい希望が持てる。やがて、人口が増えてその分だけ経済規模が拡大する。地球規模でまだ人口が増えているのは、新興国が先進国並みの技術に希望を持っている段階だからであって、技術の浸透が一巡すれば確実に人口停滞か減少に転じるであろう。
まずケインズ発想で、道路作ったり大学建てたりの公共投資をいくらしても、以前のようには需要は伸びない。収益を得るであろう農村部の地方公務員や土建業者、土地を売った農家の皆さんが、せめて株式投資にでも回してくれればまだマシだが、タンス預金になるのが関の山である。生産以外の部分で半世紀も富み栄えた日本の農村部は、貯えなくして貧乏になる(本当は戻るだけだが)恐怖から逃れにくくなっている。
同じ設備投資でもIT投資は事務作業を減らし、自動化された工作機械への投資は単純労働を減らす。減価償却が済み次第、会計上でも設備導入時のコストがなくなるから、その後は人件費を減らした分だけモノの価格を下げられる。だが、当然ながら求人減の直因になる。
まさに技術革新によるデフレ・スパイラルで、農業生産の拡大による地球規模での人口増か、生産効率化技術の停滞が起きない限り、物価と所得の同時減が実現していく。
実は、単純な解決方法がある。
4勤3休など大幅な労働時間削減でワークシェアリングを実施すればいい。
無収入者をできるだけなくせばいいのだ。収入減は物価減で相殺されるとしても、無収入ではどうにもならない。今のわが国でうまくいかないのは『働かざるもの食うべからず』の発想が極端すぎるからで、そろそろ明治以来の常時働き者主義を捨てたほうがいい。江戸以前は定休がなかっただけで、士農工商に関わらず、仕事ができない時季は全て休みだったのだから。
アメリカに対しては昭和の頃からやってきた。1970年代以降は特に、次第にアメリカ産の民生部門製品(=宇宙軍事など以外、非政府系向け)が売れなくなり、さらに貿易赤字が膨らむ所を、日本政府が米国債の引き受け(ほぼ返済無期限)や直接間接に軍事能力を買うことで穴埋めをした。
日本政府-(国債引き受け・安全保障委託費用=思いやり予算など)→米政府-(発注・社会保障)→軍事航空など重工業または一般庶民-(民生製品の購買)→日本製造業-(税収)→日本政府-(余剰金で公共投資、ただし今は国内からの借金でまかなう)→農村部の地方公務員、農家、土建業者ほか
大航海時代・16世紀以来の帝国循環というやつで、スペインとアメリカ大陸、英国とインドなどの関係に始まり、列強とか呼ばれた各国はこの手法で膨らんできた。昭和型日米(米日)帝国循環とでも名づけておく。大戦前はアメリカが、先述の通り1970年代以降は日本が債権者となり、国際収支における黒字を膨らませた。
が、そのアメリカも期待していたほどの購買力がなくなり、安かったはずの安全保障も冷戦終結でアメリカ側のメリットがなくなった上に中東方面での大苦戦などで大した効果が期待できなくなっていて、この構図では以前ほどの収益が上げられなくなった。
21世紀初頭、さらに民生部門の競争力がなくなったアメリカは金融立国をめざした。国債を日本政府に買わせるだけでなく、高金利融資の元手とすべく安く手に入る日本円を借りつづけた。(円キャリー取引)
日本政府≒日本銀行-(貸付)→日本の一般銀行ほか-(貸付・債権引き受けなど)→アメリカの投資銀行-(貸付・債権引き受けなど)→新興国向け、低所得者向けサブプライムローンなど高利高リスク融資 ×日本への循環少なし
2006年7月、日銀がゼロ金利政策(量的緩和)をやめたのは、上記のような日本への循環が少ない高利融資を止めさせる意味合いもあったのだろう。0.1%金利を上げるだけで米国などの金融機関は資金調達に苦しみ、収支は大きく悪化して死活問題になるからだ。事実、この直後にNY市場は暴落を記録している。(リーマン・ショックの遠因。この点は公式発表されないだろうから、当時の福井総裁に裏話でも聞くしか確かめようがない)
その後、2008年12月に再び日銀はゼロ金利に戻しているが、ほぼ同時に米国FRBでもゼロ金利政策をとったため、以前ほどに日本円が安く借りられる状態ではなくなっている。さらに昨年来のドル安の結果、むしろドルキャリー取引が増えつつあり、日本が資金を貸す先ですらなくなりつつある。
上記の帝国循環は60年安保・岸信介首相のころに確立したものだが、まことに残念なことに、いまだにその発想を抜け出せない方がいる。安全保障委託による国家負担減と、対米貿易でぼろ儲けという二重の高収益は全くもっておいしい状態だったという甘い記憶と、暴力手段のまる投げ先であるアメリカへの過剰な恐怖がそうさせるのだろう。昨年のインドなどを重視した麻生外交に続いて、小沢民主党でも中国に近づくぞデモンストレーションを行っているものの、対米従属外交からの転換には相当なエネルギーを要している。
したがって、未だに日本円の貸付先の多くはアメリカであり、大胆に新興国向け資金融通に切替えるまでにはいたっていない。(ただ、他国を攻撃できる軍隊のない日本にとっては、取立て能力がしっかりしているアメリカ経由で金を貸すほうが有利と言う見解もある。もっともこれは、新興国をあまりにもバカにした見方ではあるが)
新興国の中でも、先述の日米帝国循環が無効となり中国もある種の脅威になった以上、わが国としてはインド、イラン、ブラジルを中心とした南米辺りが、さらに市場となり技術供与先になっていくだろう。東京裁判でのパール判事の意見にダルビッシュの活躍、日本型地デジ方式や柔術の南米普及が重要な意味を帯びる。(このくだりは適当)
だが、日本が新興国向けの「帝国循環」で目だった収益を得られるのは、新興各国が中国レベルに追いつくまでの長くても10年間というところだろう。日本レベルとはいかなくとも中国レベルの工業技術に達すれば、20世紀の時点で出揃った、IT系を含む民生製品の国産には困らない(開発やコンテンツを含む企画は別として)。その頃にはある程度の運転資金が新興各国に存在して、資金のたらい回しによるインフレ効果は少なくなり、わが国と同じ長期デフレ傾向に突入する。
すると、文化とか数字で測れないものを除き、各国の違いは技術力ぐらいになる。今で言う日本とG20に個別加盟していない中欧各国との差程度にとどまるため、生産力や金利の格差は使えない。どこの国を市場としたり投資の対象としても、年利数%の利潤が出れば万々歳といった状況になろう。
いいことも悪いことも先進国・日本は、すでにデフレに慣れつつある。
物価も購買需要も下がるから、収入の下がり具合がひどくなければ生活には困らないはずだ。ようは考え方次第である。
やがて世界デフレに突入した際、わが国はデフレでも売れるものとか、デフレでも生活できる方法というのが勝手に確立していて、案外気楽にやり過ごしているかもしれない。ここで話している15~20年後には、戦争を知らず経済拡大しか知らない世代は70~80歳代になっており、経済縮小への猛反発・暴動などによる社会不安の心配も少ない。
一方、今の20代はまだ40代で、価値観さえ変わればバラ色の日々が待っている。
勝手な推測だが、白川総裁以下の日銀は「今のうちに長きデフレ時代に備えておけ」とたかをくくっているのかもしれない。1990年代のバブルしかり、先に慣れたほうが生き残れる確率は高い(はずだ)。
モノが安くなり、収入も減る時代に堪えよと。
もちろん、収入無関係に金を使うケースもある。
先述の開店前からパチンコ屋に並ぶオヤジ殿や、実家住まいながらしっかりと渋谷や大阪の堀江とかで金を使う独身女性達、ネット上の貨幣を日本銀行券で買ってしまうゲーマーなど、色々挙げられる。体で経済循環というものをわきまえているというより、趣味であれば金を使えてしまうものだ。
ついでに2人の友人を褒めたい。
新潟県の山間部に済む友人は、甲子園や東京に阪神タイガースの応援に出てきては金を落としていく。昭和型帝国循環の恩恵を得られる農家の当主や公務員ではない彼は、無職の時でもそうだから偉い。
新宿かどこかの路頭で絵を見せる女性に連れられて50万円で買わされた友人も偉い。評価額は1~2万円だったらしく、一気に40数万円も貢献した猛者だ。
以上の人々は、デフレが普通になった今でも経済循環に貢献しているから、その点は十分に誇ってよいと思う。
で、日本の政府筋を見ていると、支出(民間向け投資)は減らさないが、収入(税収、高収益産業の開拓、紙幣発行など)は絞る一方で、貯金を作らないどころか、まだ借金を続けている。褒めたばかりで恐縮だが、先述の友人達の生き方に重なって見えた。(ただし彼らは、借金をしない。貯金額が6桁しか行かないのが普通なだけだ)
経済感覚は、時代に応じたバランスが必要だ。
んで、先にデフレに耐えた、いや慣れたわが国が、数十年後には優位に立つって話は、そのうち書くことにする。→書いた。
後で見つけた参考記事:
なぜ、日本はデフレなのか?…FIFTH EDITION
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コメント
戦争や大災害で日本全土が破壊されない限り、もう高度成長やバブルはないでしょう。
また、それらはピラミッド型年齢構成に支えられてこそ可能だった。
そういう開発途上型の時代を過ごした40代以上の連中とは違い、何が何でも車や不動産を欲しがったりしない最近の若年層は、身の丈に合った消費生活をしているのだと思う。
長期低成長下での生き方というものを身につけてこそ、ようやく日本も先進国の仲間入り(かなり遅いが)が出来たことになるのかもしれないねー。
投稿: ひーじー | 2010/01/10 02:57
>ひーじーさん
ご無沙汰してます。
そうなんですよね。江戸期に何度かあった吉原炎上も人為的なバブル出現策との説もあるぐらいで、停滞サイクルに入ると余程のことがなければインフレ基調には転じないようです。
現状のわが国は、すでに長期デフレという先進国の中の先進国になっても、意識だけは開発途上気分が残っています。
このアンバランスは時が経つにつれて解消されますが、辛いのは儲けて来た世代、業界でしょうね。その点では、まさに40代・50代と、広告・マスコミ・金融・輸出系製造業・兼業農家・大都市圏以外の地方公務員あたりの関係者における意識変化に注目している所です。
投稿: こんだぃ=筆者 | 2010/01/10 11:23
ごめん。長くてわかんないから三行でまとめて?
投稿: | 2010/01/24 17:03
先進国では、生活が楽になりそうな技術革新が見当たらなくなった
→欲しいものがなくなる→皆がお金を出さなくなる
→給料が減る→中国やブラジルとかでも10年ぐらいで同じ頭打ちに合う。
って感じかな…
ここはツィッターじゃないので長文で書いてます。何とぞご理解願います(汗)
あと、仮の名前ぐらいは書いてもらえると、嬉しいです。
またのお越しをお待ちしております。
投稿: こんだぃ=筆者 | 2010/01/25 00:22
ユニークさも持ち合わせた文章に、笑ってしまった。「以上の人々は、デフレが普通になった今でも経済循環に貢献しているから、その点は十分に誇ってよいと思う。」のところは、確かにそういう人もいるよね。とこの理論とは関係なく、貢献している人はいますよね。
また、最後に「んで、先にデフレに耐えた、いや慣れたわが国が、数十年後には優位に立つ」
ここがポイントかもと思ったよ。
鋭い分析と暖かくする心の持ち主の言葉に嬉しくなりました。ありがとう。
投稿: ひろし | 2012/01/26 04:24
デフレの直接の原因は400兆円ともいわれる社内留保金かな?とも思います。いくらマネー供給しても企業内に滞貨させてるんでは?何の役にも立たないですよね。
企業の投資貯金比率が貯金超過になった98年から自殺者も3万人を超え。リストラで人件費を削り、しかも余剰マネーを社内に留保してるのでは…。『スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学』の著者吉本佳生さんが『日本経済の奇妙な常識』で指摘してますが…。異常ですよね。
それに石油資源が高騰しても日本の物価が低下し続けた理由なども?
この辺は水野和夫さんの本はとても参考になりました。リーマンショックなども原資は日本発という指摘は野口悠紀雄さんなどもしていて参考になりました。
デフレのままいくんじゃないかと、思います。w
投稿: tokio | 2012/07/16 22:17