大阪都構想=大阪市民に気前の良さを強制する構想
大阪都構想(大阪府特別区設置構想)。始めに、「大阪都」と呼ばれるのは、あくまで通称です。権限も財源も強い政令指定都市という面倒な存在をなくして、一般市より弱い特別区にしてしまい東京都のようになりましょう!構想をわかりやすく伝えるためのものです。ゆえに、府がなくなる案ではないので、大阪府は大阪府と言わせていただきます。
大阪市による(大阪市を解消しての)特別区設置協定書案→住民投票で可否を問われる内容
先に結論をいうと、大阪市民の方は悩むぐらいなら、住民投票で反対票を投じたほうがよいかと思います。
有利となる可能性があるのは政令指定都市以外の大阪府民であって、大阪市民(と堺市民)ではありません。
というのも、現時点で大阪市が集めている税金のうち、4割から5割を大阪府が持っていこうという内容でして、そいつを府全体で再分配しようというものだからです。
→大阪市の財政から「市税収入 全市」ファイルを開いていただき、大項目をご覧ください。そのうち、市民税のうち法人分の全部、固定資産税の45%、特別土地保有税の全部、事業所税の全部、都市計画税の全部が大阪府に移管される案です。
さらに特別区になることで、一般の市町村ならどこでも持っている「都市計画決定権」まで府に取り上げられる。そこらじゅうで「都」の看板を見かける、東京の特別区にお住まいの方には想像がしやすいかと思います。
では、あらためて大阪府議会で適切な使い道、予算配分を決めればいいかというと、今の大阪市にとっては不利な状況があるのです。
大阪市の人口は大阪府全体の3割しかありません。ということは、議席も3割しかない。
府議会全体で88議席のうち、大阪市域に割り振られる議員定数は27にとどまります。
→大阪府議会の議員定数
つまり、使えるお金が増えた!と喜ぶ地域のほうが議席が多いのです。当然、民主主義(=代議制の誤訳として)は、数が多いほうが勝ります。
「これまで大阪市が総取りしてた大企業の法人税とかを、うちらも使えるで!!」と、八尾市とか高槻市とか岸和田市とか選出の府議会議員が結託して、大阪市に再配分されないように動くことは充分にありえるでしょう。
(維新を離反した竹山市長が再選して政令指定都市の継続が濃厚な堺市については説明を省いていますが、その堺市域を除いても、53議席もが使える財源が増える側であって、依然として大阪市域は少数派になります。…つまり、堺市域にいたっては府議会の定数はわずか8。都構想を離脱したくなるのは当然かと思います。)
東京の場合は特別区域だけで都人口の7割と多数を占めているからこそ、そこまでの矛盾が生じていないだけで、大阪のような人口配分でやるのは無謀といえます。
まだしも、京都市を消滅させて特別区にするほうが現実的かもしれません。京都府261万人のうち、京都市が147万人。府議会で京都市(特別区)域がそこそこの勢力を占められるからバランスがいいはずです。それに我が地元・宇治市にとっては、京都市が総取りしていた法人税などの財源を使えるチャンスが回ってくるわけでして・・・
ゆえに大阪市民にとって、行政サービスや公共投資の配分が悪くなる可能性のほうが高い。水道料金ひとつをとっても、一般家庭用・1ヶ月20立方米での上下水道料金(税込み)が大阪市水道局の3,325円に対し、大阪府(大阪広域水道企業団)の給水を受ける地域、たとえば枚方市の場合は4,805円、ダイハツなどの本社があり比較的財政が良さそうな池田市でも3,826円となります。かりに平均をとったとしても、大阪市民の負担が増えやすいのがわかります。
なぜ大阪市の水道料金が安いのか。この半世紀は新規の建設費があまり発生していないからです。元々住宅密集地ばかりで一軒辺りに必要な水道管の長さが短かったこともあり、下水道さえ1950年代にはほとんどの整備が終わっていました。つまり、大阪市は周辺の市町村に比べて古くからの都会であることを享受しているといえます。
その古くからの都会・大阪を成り立たせているのは、大阪市民だけではありません。市内に通う働き手の多くが大阪府に広くご自宅を持ち、市内に本社を置く企業の工場も府内全般に展開しています。
だから、大阪市が持っている財源と権限を吸収いや解体して、大阪府全体で再分配すればいい。この発想もまた、ひとつの方向性だと思います。
しかしながら、橋下・維新勢力のいやらしさは、こいつを表に出さないことです。
→大阪維新の会「大阪都構想」ページ
当然です。住民投票の対象となる大阪市民にとって、不利になりそうな材料が多いから、隠したくなります。長く馴染んだ「大阪市」や区名が消えるだけでも抵抗があるわけですから、意地でも(東京へのコンプレックス解消の意味でも?)大阪都構想もとい大阪市消滅特別区設置を進めたい橋下市長や松井府知事、あるいは東京の学者各位にとって、これ以上悪印象は増やしたくない。もちろん、先述した水道の件も触れてはいません・・・
「まずやらせてください」「私を信じてください」と、デメリットやリスクを一切話さずに勧めるのは、あるネットワークビジネスの勧誘手法を思い出させます。
良いも悪いも堂々とさらして欲しい。
豊中市民が「大阪市民ばっかり良え目にあうなよ」とか、東大阪市民が「最近、町工場が減ってるんは商工振興財源が大阪市に偏ってるからか?」とか、阪南市民が「大阪に長時間通勤するんが、アホらしなってきたわ」と正直に言えばいいのです。大阪分断の恐れはありますが、東京的馴れ合い(あえて失礼な表現を使いますが)よりは、活発な議論のきっかけとなり、なんらかの創造も生まれることでしょう。
したがって、都道府県の規模の割に大き過ぎる政令指定都市の隣・宇治市で生まれ育ち、東京都特別区の住民を15年やっていた経験を持つ大阪市民の私だからこそ、維新の都構想に反対します。
参考記事
大阪都構想の欠陥 東京23区の現実(朝日新聞、東京都世田谷区長・保坂展人氏による寄稿)
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コメント
デタラメばっかりで笑えてきます(笑)
大都市法によるみなし規定があるので制度は都になります。だから都構想なのです。
名称も住民投票を伴って変更する方法、法律の1行だけを変える方法があり、5月の住民投票の結果によって今後名称も変わります。国会の意志で法律変更しないということはできず粛々と進められるだけです。
財政調整制度は、一度都が吸い上げた税のうち、東京55%に対して、大阪の場合77%が特別区に配分されます。残り23%も大阪市内の広域に使われます。
また、移管されるその23%の部分(2300億円)は、府と特別区の都区協議会が使い道を決めるため、府議会は口を挟めません。特別区が市域外にどうしても使いたいというなら別でしょうが。
藤井教授などが言っている市域の議員が3割、その他の地域が7割だから~というのは現実を全く無視した妄想にしかすぎませんよ。
反対するのは自由ですし、何を書こうが構わないですが、嘘を書いてはいけません。もっと法律や協定書の付帯資料や東京都の制度などをお調べになったほうが良いですよ。
協定書は大都市法に基づいた約束事を書いただけのものであって、都構想は協定書と維新のホームページだけが全てじゃないですよ。
投稿: | 2015/04/06 13:19
コメントありがとうございます!
匿名で「デタラメ」と書かれても仕方ないですが、この直後に配られた大阪市のパンフでは、おっしゃるとおり、その財政配分のようですね(協定書の隅のほうにかかれているのかもしれませんが)。数値はご指摘のように東京都の現状から割り出したもので、古いものでした。
そこは正直に謝ります。
でも、23%しかないんですよね?府に口を挟まれずに特別区が使える割合は・・・逆にいえば、77%も府の影響が加わる。おっしゃるとおりなら、余計賛成する気が遠のきました。880万を管轄する行政機関・大阪府(都?)が、たとえば都市計画の決定の大半をやるわけで、どこまで細かいことができるのだろうか。。
また住民投票で「特別区設置」を可とする結果が出ても、関連条例等の府議会による決議が必要です。
匿名様が『名称も住民投票を伴って変更する方法、法律の1行だけを変える方法があり、5月の住民投票の結果によって今後名称も変わります。』と書いてらっしゃるように、今後において、いくらでも勝手をされる可能性があるともいえます。
本当のことを書かれているのなら、堂々と私のように名乗られたらいいでしょう。私は間違っていれば謝ります。
が、もし維新のご関係者だったり、公務員だったり、御用学者に繋がるお方でしたら、生活にお差しさわりがあるでしょうから、ご無理はしないでください。
素直に、コメントいただいたことのみに感謝するだけです。
重ねて、お礼申し上げます。
投稿: こんだぃ=筆者 | 2015/04/20 21:58
匿名さま>大変甘えて申し訳ないのですが、『もっと法律や協定書の付帯資料や東京都の制度などをお調べになったほうが』とお勧めですので、なにか参考になる書籍や資料などをご教示くだされば、なお幸いです。
もちろん、匿名のままでかまいません。
私・近藤にとっては、だれもが師匠です。ここまで言ってくださった方なら何か出していただけるかもしれないと、勝手に期待させていただきます。
もし余裕があれば、ご協力をお願いいたします。
投稿: こんだぃ=筆者 | 2015/04/20 22:02
おお、よく読むとそこまで間違ったことは書いてなかったような。比率ぐらいか・・・
大阪市(実質的には維新の筆頭者である橋下市長の意向が強いですが)が出している現時点でのパンフレットによると、
24年度決算で試算した所、まず大阪市税として得られる6,300億円のうち、特別区には1,700億円、府には4,600億円が配分される。
さらに、その4,600億円のうち、3,300億円が特別区に財政調整として戻され、最終的には5,000億円が特別区の会計に組み込まれる見込みとのことです。この比率が匿名氏のおっしゃる「特別区77:府23」という所です。
見方を変えれば、特別区が手にする税源5,000億円のうち、7割近くに当たる3,300億円までが、大阪府(都?)の判断を経て割り振られるわけで、どこまで府(都?)が絡む必要性があるのかという点です。
個人的には産業育成など経済面、あと大学経営などは府がやったほうがいいと思うのですが、都市計画とか大阪市域ならではの文化事業は大阪市でやればいいのかと思います。
なので、特別区移行じたいではなく、移行する範囲が広さに反対といった所です。
※上記とは別に、国からの交付税や宝くじの収益があり、この配分は、2,200億円のうち、特別区1,200円、府に1,000億円となっています。
たとえば、宝くじの収益金を直接得られるのは都道府県か政令指定都市なので、一たん府が受け取っての配分になります。
投稿: こんだぃ=筆者 | 2015/04/22 23:40