単純護憲派が大後退。自主独立改憲vs対米従属改憲の対立軸へ。
今回の総選挙、ひとつには、単純護憲派が後退してよかったと思う。
そもそも憲法は、国民が立法府である国会や政府を縛るためのルールだ。国民投票を一回しないまま70年以上も経った現憲法を、無思考に全肯定しているほうが理解しづらい。たとえば、環境権なども盛り込めないのか。そこまで一言一句変えたくないのなら、「無改正で、まず国民投票だけでもしよう」との意気込みはないのだろうか。
そして幸いにして、日本国憲法の精神を発展させる形での改憲を考える勢力が出てきた。立憲民主党である。
ではなぜ、その対立軸である自民党が、他の国(要はアメリカ)が受けた戦争も引き受けられる集団的自衛権を肯定するような改憲をしたいのか。
72年前の敗戦を利用して経済運営をうまくやった成功体験を、いまだに引きずっているからである。吉田茂(麻生財務相の祖父)や岸信介(安倍首相の祖父)あたりが、潔く負け側の立場につくことで、アメリカと色々交渉して得た立場を守りたい。もっといえば、都合のいい対米従属を続けたい。そして、形だけでも自立したくて自主的に憲法を変えたい。
そこで、民進党の、自民党的な改憲に賛同する勢力だけで「希望の党」をつくり、二大政党のどっちでも対米従属みたいな態勢になるつもりだったのが大失敗した。排除された議員たちの立憲民主党が大きく票を獲得した。
要は、希望のような対米従属政党の追加発生も、共産のような環境権条項の追加すら許さない絶対護憲派も要らないという、有権者の意図が出たといえる。
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というわけで、今後は、対米従属的改憲(自民のほとんど+希望)と、日本国憲法の精神を生かした自主独立的改憲(立憲民主+維新の一部+実は安倍首相や公明の本音?)の対立軸となりそうです。
どちらに改正案を出すしても、自衛隊を肯定する文章にはなると思います。私も自衛隊を肯定する点には賛成ですが、位置づけは全く違うかと思います。9条1項2項は変えないのに3項にわざわざ自衛隊明記、さらに緊急事態で首相が動きやすくするのが自民案。一方で、自主独立的改憲案は1項は変えず2項は明らかに自衛隊を肯定できるような文言の修正にとどめ、3項では緊急事態での首相の暴走を制限するような、まさに国家権威が個人の自由を縛らない条文、いかにもリベラルな内容が想定されます。
結局、自民案になるのかというとそうもいかないでしょう。
今回総選挙での自民は、比例では3割強、小選挙区票でも5割弱の得票しか得られていません。野党分裂など期待できない国民投票の実施には慎重になるはずです。すると、なんだかんだいって野党第一党の立憲民主あたりの修正要求や、個別の条文改正撤回要求などは、あらかじめ受けていくと思います。
単純護憲派に限らずネトウヨの方々や純粋に明治憲法を望む方々にとって、実は望まない選挙結果だったかもしれません。共産や社民に限らず、潜在的には自民党も負けているわけですから。
両極の方々が、頭を冷やさねばならない状況に関しては、正直に祝います。
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